どこのホテルでも大体10 ~ 12室、多い所だと15室程度の担当になる様ですが、僕のホテルでは、1日あたり12部屋の清掃が基準になっています。最初は、3~4部屋から徐々に部屋数を増やしながら最終的に12部屋を時間内に完了出来る様に研修期間が設けられています。
それ以上の清掃が必要となる場合は残業扱いになりますし、それ以下の場合には研修時にも適用されている、時給が下がります。
僕はアラフィフで客室清掃を始めたオジサンで、それまでロクに体も動かして来なかったので「だからあえてホワイトカラーの会社員を辞めた後は体を動かす仕事を選んだ」というのもあるのですが、決して出来が良いとは言えず、それでもなんとか研修期間を終えて12部屋の割り当てをこなす様になりました。
それで晴れて一人前という扱いなのですが、それからの日々は出勤の度に、その日の担当部屋の配室によって、早く終わる日もなくは無いのですが、
「順調でも中々に終わるのがギリギリ」
「例外があると定時をはみ出る」
「焦るとミスのリスクも高まる」
「仕事が終わってもミスがなかったか心配になる」
などの不安を抱えながら、当面、皆んなと同じく仕事をしていました。
ただ、会社員時代も正社員のフルタイムで長らく働いて来て精神的にも様々苦しい時期も乗り越えた故、晴れて会社員を卒業してパートになったのに、なんだかこれでは、会社員を卒業した意味も薄れている様に感じたのです。
若い人などは新人さんでもサクサクこなしている様ですし、ベテランさんは自分よりも年齢が高そうな人も淡々と仕事を終えていますので、
「いきなり、ここまで体を使って素早く正確に動かないといけない仕事は、突然すぎたのかも。体を使う仕事にしても、立ち仕事などの、もう少し軽い仕事が良かったのかも」
と考えて辞めるつもりで、客室清掃責任者(チーフ)へ相談しました。丁度、スタッフルームに支配人もいたので話し合いの結果、
「当面の間、時給は下がるけど、部屋数を減らしてやってみたら?」
と提案いただいて甘える事にしました。部屋数を減らしてからは、
「仕事がめっちゃ楽しい!」「心に余裕があるので、ミスの無い様に落ち着いて出来るし、どんな配室でも終わる自信があるので安心」
になりました。
他の人と比べてしまって「自分だけ人並みの仕事ができていない」と少々落ち込む場面もありましたが、自分がこれ以上早く動ける術もありませんでした。出勤の度に憂鬱で焦りながら休みの日もミスがなかったか不安に思うよりは、メンタルが断然に健全です。
僕の場合は、給料の優先順位も一番ではありませんでしたので、時給を下げてでも「楽しく働く」方が良かったです。
長い目で見てくれた会社にも感謝ですし、あの時期を経たからこそ、今では皆んなと同じ12部屋ができている様にも思います。
僕の様に定常的に皆んなと同じになるには、人よりも時間がかかる人もいるかと思いますが、その時は「辞める」前に相談してみてはどうでしょうか。
後で知ったのですが、自分以外にも体力的部分だったり家庭の事情だったりなど、様々な事情で皆が皆、基準の部屋数を対応している訳でもなく、会社としても部屋数を下げてでも継続して勤務してくれるパートさんを求めています。
全てのホテルで僕の様な対応をしてくれるかは不明ですが、会社としても多少時間が掛かっても最終的に一人前になるのであれば、新しい人を探して雇って教育するよりも、考慮してくれる様にも思います。
噂が広まるとおばさん達にグチグチ言われますが、会社は認めてくれているので、ガン無視しましょう。