僕が実際に、ビジネスホテルで客室清掃の仕事を始めて驚いたのは、その客室のセッティングオペレーションの細かさです。
会社員時代には利用者として出張の度に利用していたビジネスホテルですが、その頃は、一通りの「形」に整える事が仕事なんだろう、と想像はしていたのですが、内実はそれ以上です。
僕のホテルでは、
- ハンガーの順番と重なり方
- 消臭剤の向き、電話線の配置、ティッシュの置き場所
- ドライヤーの送風口の向きとコードの置き場所
- アンケート用紙とメモ帳の枚数
- テレビのチャンネルとリモコンの置き場
- エアコンの温度(冷房・暖房)と風量・風向
- ペンの置き場所と向き
- 読書灯の角度
- パンプレットの向き
- タオルの畳み方、置き方
- コップの置く向き
- 消臭剤の向きと吹き出し口のON/OFF
まで全て決まっています。
最初は、これらを全部覚えないといけませんので、身体も使う仕事なのですが、頭も相当に使いますし、漏れがあってはいけませんし、忘れない様に心がけないといけません。正直、客として利用していた時代の僕の様に、おそらくそこまで気づいている人は宿泊業以外では、ほぼいないと思いますし、少々やりすぎ感もあろうかと思います。
しかし、ここまで細やかに定義しているのが「日本品質」と言われる所以とも感じますし、これでこそ、全国どこの店舗でも、同品質のサービスが提供されている源だと理解しています。
特に僕が働くのは、ビジネスホテルなので、観光ホテルとは違い「温かみ」や「心情的な気配り」よりも「無機質な簡素な雰囲気」の方が、楽しみはありませんが、思考を邪魔せず、お客様にはゆっくりしてもらえる様に思います。
そして、これらのオペレーションを漏れなく仕上げると部屋の中に「凛」とした空気が流れるのですが、ドアストッパーを外して、部屋のドアを閉じるこの瞬間の爽快感がなんとも好きなのです。
ドアチェーンも垂れ下げたままでなくフックに掛けて、部屋の灯が消えます。